COVIVIS Q&A

Q1-1. ウイルス濃度について、どれくらいの計測期間があれば信頼できる推定が可能ですか?

A1-1. 流行1波分が目安です.ウイルス濃度の低い時期と高い時期を連続的に捉えたデータが必要なので、フィッティング期間データについては単純に期間の長さでは決められません.また、計測する頻度、感染者数など、十分なサンプル数とサンプルサイズが必要です.週一回のウイルス濃度測定であれば、流行の波が1つ分あれば十分推定可能です.

Q1-2. 月に1〜2回の採水頻度でも信頼できる推定が可能ですか?

A1-2. 流行のピークを捉えているデータ期間であれば月に数回の採水頻度であっても推定は可能です.病気の流行が反映される感染報告数と検出ウイルス濃度を用いることが重要です.フィティング期間が長期であっても、低いウイルス濃度で推移している場合は推定の精度が低下します.

Q2. 不顕性感染者が下水中に排出するウイルス量はどのように扱われていますか?

A2. 不顕性感染者のウイルス排出も想定した推定モデルとなっています(解説資料「COVIVIS解析ツールの目的」「手順2-1〜2-2. 推定モデルの選択」を参照).通常、不顕性感染者は陽性報告数としてデータ上には直接上がってこないと思いますが、ウイルス濃度のデータには反映されます.このような軽症者や無症状期間も含めた流域のウイルス濃度の変化が、発症者増減の予測に繋がる重要な情報として活かされております.

Q3. ウイルス濃度の測定間隔が一定ではない、もしくは未測定の期間があるデータをそのまま入力しても、正しく推定できるのでしょうか?

A3. 測定日が紐付けられているデータであれば、そのままの形で入力してもパラメータ推定・発症者数予測が可能です.データが欠損している期間については前後のデータから線形補間が行われます.(解説資料「集計入力モードONの場合」「集計入力モードOFFの場合」を参照)

Q4. 感染者数の推定に他の自治体のモデルパラメータを使用しても問題ないのでしょうか?また、どの自治体のパラメータを選択すれば良いのでしょうか?

A4. 問題あります.自治体ごとにウイルス濃度測定の仕方や環境要因が異なりますので、当然モデルパラメータも異なります.同じ自治体で同じ手法で計測されたウイルス濃度データであれば近いパラメータ値となる場合がありますが、他の自治体のパラメータをそのまま使用しても正しく推定できません.サンプル数が少なくても自前のデータで推定したパラメータを使う方がフィッティングが良いと思われます.

Q5. ウイルス濃度や発症者数のグラフ表示で対数軸を推奨されていますが、どのような理由がありますか?

A5. COVIVISでは、ウイルス濃度と発症者数の双方を対数に変換してからパラメータ推定を行なっております. 感染者数のように指数的に増加する傾向のあるデータを対数変換すると線形的になり、統計学上望ましいデータの「等分散性」が満たされやすくなり、より正確な推定値や信頼区間を得ることができます.

Q6. 同じデータを入力しているのに逆進推定発症者数の結果が毎回微妙に異なりますが、問題ないのでしょうか?

A6. 問題ありません.逆進推定発症者数は乱数(ユーザが指定した発症日〜陽性報告日間の遅れの分布に従う乱数)でバラツキを与えており、あくまでもモデルパラメータの推定のために使用しています.

Q7. ウイルス株の変異にはどのように対応していますか?

A7. 過去のフィッティング期間と新規にモデル予測したい期間でウイルス株が異なる場合、予測の精度が落ちる可能性があります.その場合、新たなウイルス株でのフィッティング期間データが蓄積されるまで待つのが原則です.また、全数報告から一部報告への制度変更、弱毒化による人々の行動変様など、感染者数のデータ抽出の精度も時期により異なります.過去のデータ期間の全てを使うというのではなく、最もフィッティングの良いデータ期間を模索する必要があります.

Q8. 逆に感染者数からウイルス濃度を予測することは出来ないのでしょうか?

A8. 可能です.実際、フィッティング期間のパラメータ推定の部分では感染者数から下水ウイルス濃度を予測する精度が高くなるようにパラメータを推定しています.しかしながら、これらの推定パラメータを利用して、異なる期間の感染者数から下水ウイルス濃度を予測するという現場のニーズがあまりないと思われることを鑑みて、現在この機能はCOVIVIS解析ツールには実装しておりません.

Q9. COVIVISは他の感染症(病原体)にも使用可能ですか?

A9. 原則可能です.ウイルス濃度と感染者数の教師データがあれば、パラメータ推定をして環境水中のウイルス濃度から感染者数の予測が可能です.ただし、環境中での病原体の増減が感染者数の増減と無関係な場合(環境水中で増殖してしまう細菌など)、その限りではありません.

Q10. COVID-19以外にCOVIVISでの推定に向いている感染症の具体例を教えてください.

A10. まだ検証されていませんが想定される感染症は次の通りです.まずポリオについて、日本はポリオフリーなので教師データを集めるのは難しいですが、流行国では詳細な疫学データが入手可能ですので応用可能と考えています.感染性胃腸炎の原因となるノロウイルスなど腸管系ウイルス量と疫学データの関係、季節性インフルエンザも教師データとなる疫学データがうまく収集されるならば利用できる可能性があると考えます.

Q11. COVIVIS解析ツールで出力されたグラフをそのまま論文や報告書、Webページ等に掲載してもよいですか?

A11. はい.全く問題ありません.COVIVISの取り扱いに関する基本方針の第6条と第7条をご参照ください.

Q12. 使い方の講習会、関連した研究セミナーなどは開催されますか?

A12. COVIVISに関連した公開イベントの案内は、本サイトのTopページでの告知やアカウントメールアドレスへ案内メールを送信いたします.また、biomath、Jeconet、 EVOLVE2、等のメーリングリストからも案内を流す予定です.さらに解説動画をYouTubeに掲載しておりますので、そちらもご覧ください(https://www.youtube.com/@COVIVIS).

Q13. 感染者の報告数について、全数データ(2022年9月以前)と定点データの双方を跨いだデータ期間を利用したいのですが、どうすれば良いですか?

A13. 定点データに統一するのが最も簡単です.全数データから定点に絞って再集計されたデータを入手できれば、そちらを使用してください.また、概算でよければ双方の数値を変換する計算方法がありますが、いずれにしても同じ期間の全数データと定点データを用意する必要があります(解説資料「補足. 全数データと定点データについて」を参照).

Q14. パラメータ推定に用いる全数把握時のデータと下水中ウイルス濃度データを保有していません.定点あたり報告数と下水中ウイルス濃度データは教師データとなり得ますか?

A14. もちろん可能です.定点あたり報告数でフィッティングしたモデルパラメータを使用した場合、予測結果は定点あたり報告数で出力されます.また、この数値から対象地域の感染者数に換算(全数データ換算)することも理論的には可能です.最も簡便な換算方法として、全数報告時の一定期間の全数データと定点データのそれぞれの和を取り、「定点データの和÷全数データの和=定点割合」を算出して、以後の「定点データ÷定点割合=全数データ換算」の参考値としている自治体もあります.また、同じ日付の全数データと定点データとで散布図を出し、回帰直線を引くことで関係式を求めることもできます.

Q15. 定点報告数データを使いたいのですが、週次の集計データとして発表されています.データ入力フォームの「集計入力モード」にチェックを入れるところまでは分かるのですが、データの日付をどのようにすればよいでしょうか?

A15. 定点報告数は月曜から日曜までに集計された陽性報告数を、翌週の火曜か水曜に市町村単位の速報値で公表している自治体が多いと思います.つまり採水日で紐付けされたウイルス濃度データと、公表日ベースで紐付けした報告数データで比較してしまうと、およそ1週間後の数値と比較することになります.そうならないために、COVIVIS上で週次集計の定点データを扱う際には、定点データの日付は、発表日の前の週の日曜日の日付に紐付けし直した時系列データで入力(集計の末日が日曜日の場合)した上で、集計入力モードをONにしてください.この辺りのデータ処理の細かい点は操作マニュアルの手順2-5)、解説資料「補足. 週次集計の定点データの扱い」「補足. 集計入力モードONの場合」をご参照ください.

Q16. 行政や研究機関、企業がCOVIVISを利用する際、費用は発生しますか?

A16. 無償での公開となっております.利用者に課金は発生しません.

Q17. 環境DNAからの生物個体数の推定などにもCOVIVISは使えますか?

A17. 原理的には感染症と酷似していますが、やってみないと何ともいえません.予測モデルは「回帰モデル」を選択してください.COVIVISはDNA濃度と生息数だけでなく、両者の変動を最尤推定し、予測に繋げます.個体数やDNA検出量に季節変動がある生物群での解析が好ましいです(繁殖期や越冬期での移動がある場合など).やってみて上手く行きそうな場合は是非、COVIVIS運営にご一報ください.

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